ホルモン療法の基礎知識
体と心の性別が一致しないことを性同一性障害(GID)といいます。
その中でも体は女性で心が男性のことをFTMと呼びます。
ホルモン療法とは
性ホルモンを投与することで体を目的の性別に近づける方法です。
FTMの場合、
男性ホルモンを投与することで男性的な外見や特徴を手に入れることができます。
自分の体に対する違和感、不快感を軽減し、
男性として生活していくことを目的とします。
テストステロン療法ともいいます。
性別違和感、体の嫌悪感を解消できる
自分の女性的な体に対する嫌悪感を和らげることができます。
FTMの方が特に苦痛を感じるのは月経です。
月経はテストステロン療法で停止させることが可能です。
また、男性の象徴であるヒゲや体毛が発達し声も低くなります。
これらの変化に喜びを感じる方が多いです。
自分らしく生きれるようになる
男性として生きることが可能になります。
女性として振る舞ったり自分に嘘をつく必要がなくなるので、
人生、生活面での苦痛が軽減されます。
具体的にどうするの?
テストステロンを投与します。
テストステロンとは男性ホルモンの一種です。
血中のテストステロンレベルを、
男性の平均的範囲(300-1000ng / dl)まで増加させます。
これにより体が男性として成長し始めます。
体内で生産される男性ホルモンには
テストステロン、
デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、
ジヒドロテストステロン(DHT)の3種類があります。
これらをまとめて男性ホルモン(アンドロゲン)といいます。
テストステロンは最もメインとなる男性ホルモンです。
どうやってテストステロンをとるの?
病院では注射で投与します。
美容クリニックや泌尿器科やGID専門クリニックで受けるのが一般的です。
個人で行う場合は錠剤、ジェル等を購入して行います。
いうまでもありませんが、
病院で医師の管理のもとやっていくのが理想です。
病院で受ける場合の条件
・性同一性障害と診断されている(半年〜2年かかるのが一般的)
→詳しくはコチラ性同一性障害の診断の流れ
・18歳以上である(20歳未満は親の同意が必要)
・2年以上の通院と医師の許可が下りた場合に限り15歳からでも可
個人で開始する場合の注意点
・何が起こっても自己責任
テストステロン療法には健康リスクがあります。
このリスクは自己責任です。
また、男性化した部分はホルモン投与をやめても元に戻りません。
軽い気持ちでやってよいものではありません。
・正しい知識が必要
安全に男性化するには、
ホルモン療法の正しい知識が必要です。
また、メリットデメリットもしっかり把握しなければ後悔にもつながります。
・いずれ手術を受けたい場合は病院で
乳腺摘出手術、子宮・卵巣摘出手術を受けるには、
病院によって様々な条件があります。
「○年以上テストステロン療法をしていなければだめ」
「個人でのテストステロン療法の期間は含めない」
など。
将来的に手術を望む場合は、
病院でホルモン療法を受けた方がよいです。
ホルモン療法で得られる変化
陰核(クリトリス)肥大
ヒゲ、体毛の発達
筋肉量増加
皮下脂肪減少により見た目が男性っぽい印象になる
月経の停止
声の男性化
体脂肪の再分配
女性ホルモンの抑制
なぜテストステロンで男性化するの?
男性的に成長するか女性的に成長するかは、
ホルモンバランスによって決まります。
なので女性でも男性ホルモン優位にすれば男性的に成長します。
性ホルモンの大部分は生殖器から分泌されます。
男性は睾丸から男性ホルモンが、
女性は卵巣から女性ホルモンが分泌されます。
一応女性でも、
男性ホルモンはわずかに分泌されています。
男性ホルモンは女性ホルモンを抑制する
男性ホルモンには、
女性ホルモンを抑制する作用があります。
なので男性ホルモン剤を投与すると、
女性ホルモンは自然と低下します。
つまり男性ホルモン剤を投与するだけで、
男性のホルモンバランスにできます。
ホルモン剤は常に投与していかなければならない
ホルモン剤には効果時間があります。
投与をやめると、
体はまた徐々に元のホルモンバランスに戻っていきます。
つまり男性化が止まり、
また女性化が始まってしまいます。
なので常に投与し続け、
効果を維持する必要があります。
男性化にはどのくらいかかる?
2〜4年ほどかかります。
この男性化の速度は、
遺伝子、ホルモン摂取開始年齢、健康状態、ホルモン剤の種類など多くの要因によって決まります。
声や体つきは数か月ほどで変化してきますが、
ヒゲの発達は数年、
場合によっては10年にわたってじっくり発達していきます。
多くのFTMの方は、
急速に男性化することを熱望していますが、
思春期の男性を考えてみてください。
非トランス男性であっても、
長い時間をかけて男性らしくなっていくのです。
ホルモン剤を大量に投与しても、
変化の速度は上がりません。
健康リスクが増大するだけです。
また、ホルモンバランスは一人一人違うので、
適切な投与量も人によってちがいます。
他人の投与量や本サイトに載っている推奨投与量は参考程度にしてください。
関連ページ
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